クローン病の市民公開講座「クローン病ってどんな病気」  
開催日 : 平成13年5月13日(日) 10:00-16:30 会場 : 神戸ポートピアホテル

基調講演  HPN
(Home Parenteral Nutrition )

大阪大学医学部附属病院
   機能制御外科学 
   井上善文先生
2008.2現在 川崎病院 外科 総括診療部長をされております。
タイトルが「在宅IVH」ということになっておりますが、この言葉は、間違いです。HPNという言葉で覚えて下さい。
 クローン病の患者さんは、ほとんどの患者さんが入院されると、高カロリー輸液を受けていると思われます。
この高カロリー輸液は、IVHではなく、TPNという言葉が世界的に使われています。日本だけです、IVHという言葉があるのは。
今日、話を聞かれたんですから、病院で「今からIVHをします」といわれた時には、「私は、TPNを受けたい」と言ってもらうと、非常に知識があるなということでドクターの方もびっくりするのではないかと思います。

 

それでTPN(IVH)がどれだけ効果があるかといいますと、この方とこの方は同じなのですね。 こういう栄養状態の悪い人にTPN(IVH)をやると、ここまで変わりました。
 在宅中心静脈栄養というのが保険適応になっていまして、これも在宅IVHという言葉ではなくて、HPNという言葉になっています。
「HPN」の「H」は、家(Home)で、「P」は腸をつかわない(Parenteral)「N」は、栄養をする(Nutrition)という意味です。
 市民公開講座で話すということを若い者(研究者)にいうと、「大阪大学を宣伝してくれ」と。「先生は、静脈栄養だけをやっているのではなく、炎症性腸疾患やクローン病などもちゃんと治療しているんだということを言ってくれ」ということを言われました。
 (大阪大学病院では)潰瘍性大腸炎を消化器内科で内科的治療をおこないながら手術適応を判断しています。腹腔鏡補助下での大腸全摘をやっています。
一番大事なのは、消化器内科の抗IL-6レセプター(受容体)抗体の研究をやっています伊藤先生が僕の大学時代からの同級生でございます。内科と外科が非常に仲がいいということでございます。

 クローン病に対しても同じようなことをするんですけれども、お話するHPN(IVH)は、クローン病の治療ではなく、患者さんのQOL(生活の質)を上げるための手段として思っていることをご了解いただきたいと思います。 クローン病に対するHPN(IVH)の適応というのは、腸をたくさん切りすぎて経腸栄養を管理できないという短腸症候群。消化管狭窄が認められる場合に手術待機期間の栄養管理をおこないます。 患者さんによっては、まだ手術したくないという、例えば、一年経ったら大学に入るとか、就職するとか、その間、ちょっと待ちたい、手術せずに待ちたいという時にも一時的なHPN(IVH)もやります。

経腸栄養でHEN*1をやると調子が悪くなるとか、下痢をするとかという場合にもHPN(IVH)の適応があると思います。 肛門病変が非常にに高度で、エレンタールはできるんだけども、完全な絶食にしていた方がいいという時にもHPN(IVH)を考えます。
 HPN(IVH)を完全に理解している医者というのは少ないので、みなさんの知識がすごいかもしれない。だから他のドクターに対してあまり教えてほしくないなという内容かもしれないんです。そこのところを気をつけて医者を責めないようにして欲しいと思います。
*1 Home Enteral Nutrition 在宅経腸栄養

まずTPN(Total Parenteral Nutrition)をやる時いろんなカテーテル(管)があります。みなさん、どのようなカテーテルを入れるかということを知っておくことが大事だと思います。カテーテルにも大きく分けると4種類あります。これは、O型シラスコンカテーテルといいまして、非常にやわらかいカテーテルです。 このカテーテルで家でHPN(IVH)をやることができますけれども、このカテーテルをお勧めすることはできません。僕の経験では、このカテーテルは、ある程度年数が経つと朽ちるんです。経験したいちばん長い患者さんでこのカテーテルで7年やりました。

これから出すのがお勧めのカテーテルです。

 在宅用には、ブロビアックカテーテル(Broviac)、ヒックマンカテーテル(Hickman)と埋め込み式カテーテルがあります。 ブロビアックやヒックマンカテーテルの特長は、矢印で指している部分がシュアーカフといいます。この部分を皮下に埋め込んでおきますと、繊維が固まってひっぱっても抜けなくなってしまいます。
 

これでクローン病の患者さんにヒックマンのカテーテルを入れて1年経つとこういうふうになります。 シリコンと言うのは、生体適合性が高い材質ということで、この部分を見ますと、感染しないんじゃないかと思えるんですね。 高カロリー輸液のカテーテルというのは、いうなればライフラインです。これを見るとシリコンのカテーテルは体にフィットしているという感じになるんです。 このカテーテルの入れ方が家で管理するためにいいかというと、よくないんです。
自分でこの部分を消毒しないといけないですね。自分のお乳を見るのも難しいです。本当に在宅でやろうとすると皮下トンネルを下げないとできません。このブロビアックのヒックマンカテーテルの場合、いちばん重要なのは、輸液セットとカテーテルを接続するところです。そこからばい菌が入る可能性が高い。 輸液ラインとカテーテルの接続に関しては、フリクション型という差し込むだけのものと、ルアーロックといって、差し込んでねじるものがあります。

 

少なくとも、こちら(差し込むだけのもの)を使ってはいけません。夜寝ている時に外れてしまうかもしれません。
このタイプのものでも輸液ラインと接続部のところから感染を起す可能性が高いです。こういう接続システムを僕が開発しました。インジェクションプラグというゴム付きのフタをしておいて針でつなぐ。そうするとここの接続部があまり問題にならずに簡単にいきます。感染しにくいタイプです。実際のやり方というのは、ゴム栓の部分を消毒して針を刺してつなぎます。このタイプのカテーテルでいちばん長い患者さんは、7年保ちました。

 

その2へ(ポートを用いたHPN)
その3へ(患者さんからの質問、合併症について)

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